コラムVol.26


ヨソの盆栽

彼は最近やっとウチに馴染みつつあります

草木を鉢に植えます。その日からその一鉢は私と一緒に季節を過ごしていきます。すると表土は固まり、コケが生え、しっかりと根付いて鉢と一体となってゆきます。

そのうつろいを、水やりや剪定をしながら追っていく内に、それはいつのまにか、ウチの盆栽になっているのです。

そこには既に植替え前の草木や、空っぽの鉢は存在しません。それは一個のウチの盆栽です。ウチの盆栽はそうして形成されていくのだと思います。

なぜそんなことをいまさら考えているのかと申しますと、購入してきた盆栽になにか違和感を感じるからなのです。イヤ、作りが良いとか悪いとかそういう違和感ではなく。もちろん、立派に出来上がった一鉢の盆栽を買ってきた時でも、ポリポットに入った苗木を買ってきた時でもです。

この違和感は一体なんだろうと思っていたら、なにか実生活において、似た感覚を持つ瞬間を思い出したのです。それはヒトの家におじゃまする時のそれとそっくりなのです。ヒトの家っておじゃますると、そこらに家具がいきなりあったりして、それは私の世界の中に歴史を持たないものなのです。私がセットした舞台ではないからですね。完成後に初めて会う風景なのです。 それが、盆栽にもあったのですね。ヒトがどこかでいつか植えて世話をしているうちにここにコケが生えて、枝が徒長したので剪定したりして、、、そういう過去が一切不明なまま目の前に完成然としてあるのですから。

それで、私は盆栽や苗を買って来たときにそれらをヨソの盆栽、と心で思っていたりするのです。それですぐ植替えをして、盆栽をリセットしてみます。

それでも、その盆栽がヨソの盆栽からウチの盆栽になるまでに、半年や1年は掛かるような気がします。

特に作り込みが凝っている木を買って自分の鉢に植え替えた場合、なかなかヨソの盆栽の感じが抜けず、いつまでもウチの盆栽になってくれないような感じがします。

ヨソの家におじゃますると、その家のにおいがしますね。きっとウチの家も自分では分からないですが、においがあるのですね。ウチにあるヨソの盆栽もなんだかヨソの家のにおいがしてくるんですよ、、、多分気のせいで、それはコケのにおいだったりするわけですが。


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